明神東稜

クライミング

日程:2022年7月30日~31日

メンバー:K岡Ⅱ、文一Ⅱ

7月29日、名古屋で文一と合流し、夜行バスで上高地へと発つ。

7月30日、朝5時過ぎに上高地着。いつ来てもここの空気は清々しい。河童橋から望む穂高は朝日に照らされている。日本山岳会の山岳研究所に立ち寄り、OBのPさんより差し入れのおにぎりをいただく(Pさん、ありがとうございました)。コマドリの声を聞きながら明神まで歩き、朝食をとる。信州大学の建物の脇にある橋を渡って踏み跡をたどると、下宮川のガレ場に出る。ガレ場は浮石が多かった。頭上には朝陽に輝く明神Ⅴ峰東壁。格好良いフェイスだ。Ⅴ峰に気をとられていたせいか、宮川のコルへの支流を見過ごしてやや登りすぎてしまった。仕方なく笹薮の斜面を藪漕ぎでトラバースすると、宮川のコルのすぐ下に復帰できた。宮川のコルからひょうたん池に向かうが道は不明瞭で、時々出てくる藪漕ぎに文一はうんざりした様子だった。K岡はベニヒカゲや明神の岩場を眺めながら割と楽しく登っていた。ひょうたん池で少し長めに休み、ハーネスをはいて東稜にとりつく。しばらくは尾根の藪の中にある踏み跡をたどっていく。標高2500mあたりでようやく少し岩が出てくるが、簡単な登りなのでロープは出さない。その後またしばらく藪尾根を歩く。踏み跡はあるが、ハイマツの藪漕ぎはやや時間をとられる。細かいルーファイをしながら弱点をついて登っていけばロープはいらない。ルーファイをミスすると急な草付きやもろい岩場に出てしまうような環境だった。時々短い岩場を登りながらもおおかた藪の尾根を登っていき、ようやくラクダのコルに出た。コルの先にそびえたつバットレスとその先の明神主峰がいかにもアルパイン的でかっこいい。藪を嫌う文一もこの光景を前にして満足気であった。テントを張った後、のんびり休む。本を読んでいると雨が降ってきたのでテント内に入る。雨上がりにテント外に出てみたが、素晴らしい眺めだ。青い影のおりた常念の背後に巨大な積乱雲が発達し、夕陽に赤く染まりながら時おりその内部に電光を発していた。雲の上部が大気圏の上縁に達して水平に広がっていく様子が見事であった。あの雲の中にいたらと思うとぞっとするが、見ている分には凄い景色だ。幸い穂高には雲もなかった。シュラフカバー1枚だと少し肌寒い夜だった。

7月31日、3時50分起床。ラクダのコルから歩いてすぐの場所で早速ロープを出す。正面の柱状の岩は上部が前傾気味で難しそうなので左の急な草付きにルートをとる。かん木にランナーを取り、体重を分散させ、体重移動をソフトに行って登っていく感じが沢の悪いまきに似ている。低木2本をアンカーにして文一にフォローしてもらい、そこから少し歩いてバットレスの基部に着いた。すっきりした岩場で気持ちよさそうだ。凹角の側面にあるホールドを拾いながらクラックに沿って登る(Ⅲ~Ⅲ+)。登山靴で登れるが、程よい緊張感のあるピッチだった。残置2枚と新設1枚のハーケンで後続をビレイした。ビレイしながら朝陽に輝く明神を見ていると、アルパインだな、という感じがしてたまらなく嬉しい。バットレスの上は簡単な岩場と草地を登り、明神主峰に立った。快晴で周囲の山々を一望できる。東稜の長い稜線を振り返って休んだ。主峰からの下りは、もろくて急な岩場をクライムダウンする。ノーザイルで行けるが、山行中で一番怖かった場所かもしれない。稜線を北上すると、再びコルに向かって急に切れ落ちる。記録では懸垂とある場所で、古めのフィックスロープなども垂れていた。大きな岩も浮いていることがあり、ブッシュもない状況で、確実なアンカーがとりにくい。クライムダウンの方がリスクを負いにくいだろうということで、ノーザイルで降りる。急傾斜だが、よく見ればホールドもスタンスもあるので問題なく降りた。コルから奥明神沢の方をふと見ると、ブロッケン現象が生じていた。コルから先は前穂高山頂まで簡単な岩場を登高。2回ほど偽ピークに期待を裏切られた後、8時30分前穂高山頂着。山頂でハーネスを脱ぎ、大休止。下りの重太郎新道も急な部分が多くて割と時間がかかる。下山した上高地はまだ昼下がりであった。

ラクダのコルから望むバットレス

 

バットレス基部にて

 

バットレスを登る

 

明神主峰への登り

 

明神山頂にて

 

奥明神沢のブロッケン現象

記:K岡

コメント

  1. 北野せっけん(’99入部) より:

    congratulations!
    素晴らしい写真をありがとうございます。明神岳はいいところですね。ぜひ積雪期も行ってみてください。まさに岩と氷のピラミッドですよ。