剱岳1 八ツ峰Ⅵ峰Aフェイス~上半

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8月の剱合宿の前に2回生3名で剱のバリエーションルートを登った。

 

日程・行動概要

2022年8月16日:室堂~剱沢

17日:剱沢(停滞)

18日:剱沢~熊ノ岩

19日:熊ノ岩~Ⅵ峰Aフェイス~八ツ峰上半~熊ノ岩

 

メンバー・学年

K岡Ⅱ、文一Ⅱ、スナメリⅡ

 

8月16日。アルペンルートを使うたびにアプローチをごまかして入山しているような気になるのだが、実際使っているので説得力がない。そんなことを思いながら室堂着。ガスに包まれ、風が強く、気温が低い。入山をあと2日遅らせるべきだっただろうかと後悔の念がよぎるが、いまさらどうしようもない。沈も一興だと自分に言い聞かせながら出発。雷鳥沢を登り、剱沢小屋に到着。時折八ツ峰の下半や前剱が雲の中から姿を現す。今日の夜から明日にかけては停滞前線の通過による大雨が確実で、熊ノ岩まで行くか迷う。熊ノ岩にいた方が明後日にアタックをかけやすいが、明日の悪天を熊ノ岩でやり過ごすのは、非常時の脱出に時間がかかり不安だ。結局、曇りや雨の合間をぬって登るより、19~21日の好天にかけようということになり、剱沢泊を決した。テントに入ると風雨が強まり、剱沢泊でよかったと思う。一晩中テントがゆれ、ポールが折れないか少し不安だった。

8月17日。今日は沈殿と決まっていたので、9時ごろに起きる。風雨にさらされるテントの中でトランプをし、岩波新書を読み、テント内を排水し、集英社文庫を読み、行動時より行動食を食べ、新感覚派の文庫小説を読み、テントをたたく雨音をきいてぼんやりする。17時、久しぶりに雨が止む。テントの外に出ると、曇り空の下、剱が重厚である。ダウンを着ても風が冷たい。テントに戻るとまた雨が降り出した。明日は雨が弱まってから熊の岩を目指すことにした。

8月18日。4時ごろ目が覚めた。6時までごろごろしていたが雨は止まず、二度寝。7時に起きて朝食を食べてから出発の準備をする。結局風雨はあまり弱まらなかった。水が飽和したテントを雑巾のようにしぼって撤収し、剱沢を下る。武蔵谷出合より手前でアイゼンをはき、雪渓を歩く。10時ごろ、風雨は止み青空の断片と久しぶりの再会を果たす。長次郎谷出合の雪渓は割れており、右岸をまく。陽が差す長次郎谷を登っていくが、上に行くほどガスが出てくる。熊ノ岩の手前でもう一度割れ目を右岸からまき、熊ノ岩に着く。雨風低温でかなり寒い。すぐにテントを立て、温かいものを飲み、服を乾かす。ガスで偵察にも行けず、雨がまた降りだす。18時ごろにようやく雨が止む。夕食の麻婆高野豆腐を食べるが、気温が低く皆シュラフから出ない。明日こそアタックしたいが入山から3日間、あまりに雨が続いて明日の好天のイメージがわかない。

8月19日。3時半起床。とても寒い。寒さでメンバーはよく眠れなかったようだ。テントの外に顔を出してまず目に映ったものは月と星が浮かんだ空、そして月光に照らされて白くぼんやりと浮かぶ熊ノ岩。その右手に漆黒の八ツ峰が完全なシルエットになって強烈な印象を与える。入山4日目にしてようやく姿を現した八ツ峰Ⅵ峰に見とれていると、驚くほど体が冷えていた。朝食をすまし、濡れた靴に足を入れて外に出る。明るくなるとともに雪渓をトラバースし、Aフェイスの基部に立つ。魚津高ルート1P目、スナメリリード。凹角沿いのⅢ+~の登り。2P目、K岡リード。リングボルトとぺツルボルトが打たれたしっかりした終了点でピッチを切る。3P目、文一リードでAフェイスの頭に立つ。残置ハーケンが多く、カム、ナッツもほぼ必要ないほどだった。頭から直接八ツ峰上半を縦走するのは難しそうなので、クライムダウンと1ピッチの懸垂でⅤ・Ⅵのコルまで下降する。コルから三ノ窓側に斜上しながら登りⅥ峰着。クライムダウンと懸垂1ピッチでⅥ・Ⅶのコルに降りる。コルの先、三ノ窓側をトラバース気味に続く踏み跡をたどっているうちにⅦ峰を完全にまいてしまった。踏み跡はニードルのあたりに続いていたが、不明瞭なのでⅧ峰へと登ってリッジ上に復帰する。Ⅷ峰から2ピッチの懸垂で窮屈なコルに降り立つ。このコルから長次郎谷右俣へ容易に下れそうだった。長次郎谷側の凹角にとりついて八ツ峰の頭へ最後の登り。青空の下、頭に立つ。周囲の山々を望んで大休止。頭からやや急な岩場をクライムダウンして池ノ谷乗越に降りる。右俣は雪渓が切れ切れに続き、左岸のザレ場を容易に下降できた。最後は熊ノ岩までグリセードで降りる。ようやく手にした好天でAフェイスと上半のアタックを終え、熊ノ岩でゆっくり休んだ。

ー剱岳2に続くー

 

Ⅵ峰Aフェイスから振り返る本峰北壁と熊の岩。出発してきた赤いテントが見える。

 

Aフェイス、魚津高ルート、1ピッチ目。

 

八ツ峰Ⅷ峰からの懸垂下降。

 

池ノ谷乗越から長次郎谷右俣を下降する。断裂した雪渓が縮小し、雪渓左岸のザレ場を通過できた。

 

熊ノ岩に帰還。久しぶりの太陽で物干し中。背後には八ツ峰Ⅵ峰。右からA、B、C、Dフェイス。

記:K岡

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