3/5-8:赤沢岳屏風尾根~赤沢岳~鳴沢岳~岩小屋沢岳~爺ヶ岳~鹿島槍南峰~柏原新道
メンバー:CLドロップⅢ、SLハンケツⅡ、ケッペンⅠ
時間記録
3月5日(雨交じり雪、無風)
3:30 日向山ゲート
6:00 扇沢
8:15 屏風尾根とりつき
11:30 P2206
(8h)
3月6日(小雪、風)
7:00 P2206
8:50 主稜線
10:15 赤沢岳
11:20 鳴沢岳
12:30 新越乗越山荘
13:40 岩小屋沢岳
16:30 種池小屋
(9.5h)
3月7日(くもり、強風)
8:30 種池小屋
9:40 爺が岳南峰
11:30 爺が岳南尾根より南の斜面標高2,350m地点
(3h)
3月8日(くもり、無風)
4:55 テント地
5:35 爺が岳南峰
7:00 冷池山荘
8:00 布引山
8:45 鹿島槍南峰
12:00 爺が岳南峰
12:30⇒13:00 テント地、撤収
15:35 柏原新道登山口
17:00 日向山ゲート
(12h)
行動記録
3月5日
雨が怖かった。雨が降ると全層雪崩の危険性が高まる。実際に登っている最中にもグライドクラックやスノーボールなどの兆候、雪崩れた跡、雪崩の音が聞こえていた。そのため、睡眠不足も承知で駐車場着いてすぐに登ることにした。歩き始めて1時間ほどでケッペンが猛烈な眠気を訴えペースがかなり遅れる。スノーシェルター内で30分ほど仮眠休憩をした。起きると空は白み始め扇沢の景色が見える。天候もまだ弱い雪だ。これが雨になる前になんとか2206のコルに行きたい。雪は以前の降雪による積雪は高い気温でがっちり固まっている。その上に15センチほどのかなり水分を含んだ雪だ。まだスラブになっていないし雪崩の心配は少なそう。ラッセルもすね程度だ。
扇沢でワカンをつけ、サクサク進めると思いきや、ケッペンが眠たそうすぎで進まない。前日朝まで飲み会をしていて運転を大部分任してしまった上にこんな行程で申し訳ないと思いつつ、行くしかない。岩小屋沢や鳴沢、赤沢がそれぞれとても綺麗だ。この辺りから雪はみぞれっぽくなりかなり濡れ始める。お目当ての赤沢岳屏風尾根を遠くから見つめ、籠川左岸から取り付けば良さそうだと踏んで進むが、しかし、近づくと赤沢に阻まれた上に右岸から取りついたほうが良さそうな傾斜だった。オブザベ力が足りない。
ただし、尾根末端まで辿り着いたらこっちのものだ。ラッセルをどんどん進めて行く。深くないし気持ちよく登れる。高度を上げていくごとに尾根の左右の絶景がよく見える。隣の尾根の形状を見ながら現在地の標高を探り登って行く。2000メートルを超えたあたりから、雪庇が出てきたり斜度があるところをトラバースしなければならくなったりと思ったよりも悪い。ただ、二人ともそんなに怖がっていないようで少し安心するも、足元が滑ったりして滑落が怖い。アイゼンに変えても良かったかもしれないが、安心して変えられる場所もあまりない。緊張できる尾根歩きが続いて2206までつくことができた。その先のコルをテントサイトと決め整地をした後にすぐに3時間仮眠をしてから夜ご飯を食べて眠りについた。
3月6日
四時起きのつもりだったがテント生活で初めてみんな揃って寝坊して四時半になった。久しぶりにテント内でぐっすり寝た気がする。2時間で準備できると思ったが、結局七時になってしまった。冬型になっており、こちらの方は曇りで蓮華岳方面からはたまに弱い光がさすが、爺ヶ岳方面は視界が悪い。相変わらず尾根は狭く緊張を強いられるが、幸いザイルを出すほどでもない。雪面はクラストしている層がすぐ下にありアイゼンで歩きやすい。一部氷の壁が2メートルほどあらわれたりしたが、判決がうまく超えていってくれてお助けヒモを出してくれた。
2時間ほどで主稜線へ辿り着いた。ケッペンの笑顔が見れて嬉しい。稜線では風も強くなり、あまり落ち着いていられないうえに小雪もちらちら降っていて視界が悪い。正直リーダー研の経験がなければ停滞していたところだが、地図で方角を事前に把握していたので進むことにした。赤沢岳に出るまでに少し急な岩場を巻く必要がありお助けヒモを一応出して進んだ。
赤沢岳をすぎると、鳴沢岳まで降って登った。ここらへんは尾根が狭くて進むのに時間がかかる。岩小屋沢岳までの尾根は少し広くなってきた。ただし、視界がどんどんと悪くなり雪庇を見ながら進むのも一苦労。新越ノ越山荘で一息休憩し、本日の目的地を種池山荘に変更する。相変わらず天気は悪く、ルーファイに気を使うが、岩小屋沢岳を過ぎるとダラダラとした降りの尾根となった。ここら辺は大きく雪庇が発達しており、少し警戒が甘かったなと反省している。種池山荘までのコルの下りのウィンドスラブを警戒しつつ、下ったのちに、山荘まで少しの登りだ。ケッペンの踏み抜かないラッセルがとてもうまく後続が踏み抜きながら引き離される。山荘について近くに整地したキャンプ地を作りやっとゆっくりすることができた。悪天での行動は疲れるうえに、テントに入っても全体的に装備が濡れたり凍ったりしていて縦走の大変さを感じるが、一方で充実感に満たされつつ眠りについた。
3月7日
強い風による結露水の跳ね返りと、濡れたシュラフの寒さであまり寝ることはできなかった。冬型が緩むことによる天候の回復を待つために昼前から行動し始めようと思っていたが、5時には目が覚め、ご飯を食べたらぼーっとしてるのもなんだかなと思い、8時半に出ることになった。雪は強くないが猛烈な風が吹いている。やまてんだと15mだ。さらには昨日よりも視界が悪く、歩き続けることができずに止まってしっかり周りを見ないと進めないほどである。ルート自体は稜線歩きでほぼ迷わないだろうと思いつつ、滑落等の危険が伴う。それに常時吹き荒れている風に足元がとられる。1時間ほどで爺ヶ岳南峰に辿り着いたが、山頂で休憩する余裕はなかった。30メートルほど下ったところで風を凌げる場所があり、ドロップが脱げかけていたハーネスを脱ぐ。このあたりは岩稜になっていてワカンよりアイゼンの方が良いかと思ったが、履き替える余裕があまりなく、後悔する。
南峰と中峰の間のコルまで降ったところで、風が強すぎてまともにまっすぐ進めなくなったので、先ほどの風が避けられるところまで戻ることにした。ケッペンが手が冷たそうで登り返すスピードもかなりゆっくりになる。また、斜面はクラストしておりワカンの足元もおぼつかない。風除けの場所までなんとか戻り、バケツを掘りうずくまる。15分ほど待機しても状況が好転しなかったので南尾根を下ることにした。多少は太陽が見え始めたが相変わらず風が強すぎて降りるのにも体がかなり振られる。やっとの思いで見えた樹林帯へ逃げ込みテントを張ることにした。冷静に位置を確認すると南尾根沿いからは少しずれていて余裕のなさが垣間見える。風除けを作ったテントの中は暖かくやっと安心し、各々どこが凍傷になりそうだったかを語り合い、翌日に備えた。
3月8日
夜のうちに風がやみ、昨日より快適なテント内のはずであったが、シュラフは濡れておりあまり暖をとれずに寝られなかった人多数。しかし、本日北アルプスの絶景がみられる大チャンスである。静かな夜を爺が岳南峰にむけて登高していく。クラストした斜面にアイゼンをテンポよくけりつけていく。まもなく、左手より立山、劔がみえ勝利を確信する。爺が岳南峰につくと夜明けの良い景色が広がっていた。一通り写真を撮り、中峰へ歩き出す。昨日はあんなに苦労した稜線が、無風で視界が開けていれば何の問題もない。このあたりは稜線の方角的にかなり大きな雪庇が広がっていた。強風下で無理に行動しなくてよかった。
中峰まで着いたら、なんだか鹿島槍まで行くことが現実的になってきた。タイムリミットを9時に設定し、せっかくならと楽しい稜線散歩を開始する。右手には朝焼けの頚城、左手に劔、前には鹿島槍、後ろを振り返れば縦走してきた稜線が見える。至福のひと時だ。たまに踏み抜くことはあるが、アイゼンでサクサク進める。爺が岳北峰を富山側にトラバースするようにして巻き進む。ここも視界がなかったらと思うと不安だ。冷池山荘まで来てしまえば、昨年も通った道、不安はない。昨年より大きな雪庇が発達しており、クラックが入っているとこともあり今にも崩壊しそうだ。鹿島槍につくと白馬のほうまで見渡せ、メンバー全員に笑みが生まれた。この瞬間を味わえてよかった。
あとは順調に帰るだけと思いきや、爺が岳北峰から中峰のあいだでハンケツの右のアイゼンが壊れた。ドロップのと取り換えて、ドロップは右足だけワカンにした。この場所だからよかったものの、場所によってはアイゼンがなかったら厳しかったかもしれない。少なくともワカンのバックアップがあってよかった。
テント地に戻り、急ぎ撤収をし南尾根を爆速で下る。標高を下げるほどに雪は降雨などの影響でぐさぐさで春山の様相だ。そして、尾根からアルペンルートに降りる最後のところで急すぎる斜面が現れた。なんとも嫌らしい尾根だ。尾根の左右から巻こうとも考えたが、どちらにせよ急であるし、足元は凍ったりもしていて具合が悪い。ここは懸垂の出番かと思い、最後にロープとハーネスをもってきてよかったと思う。しかし、最後だからかと急ぎすぎてすべてが雑になった、ドロップがチェストハーネスを作ってバックアップも取らずにおり始める。しかも、あろうことかうっそうとしている木に向かってロープを頬り投げた。予想通り、ロープは木に絡まり、チェストハーネスに体をきつく引っ張られながらバックアップもなしに絡まりをほどく地獄の時間が始まった。15分ほど格闘し、ついにザックを捨てることを選んだ。どこかで止まるだろうという楽観的な思いから投げ捨てたザックはザラメ雪を見事に滑っていき、視界から消えた。ここで、荷物を全ドロップしたら山岳部引退しようと思った。ザック無しでなんとかおり、ドロップはザックを探しに一人河原へ。あった。沢の中に。。靴を脱ぎ、極寒の沢の中へ入りなんとかカラビナをつける。河原へ上がり、一息ついて引き上げようとするも、水がしみ込んで重すぎてあがらない。何とか格闘しているうちに、靴ごと沢へ落ちてしまった。ハンケツが助けに来て切れたのもありなんとか復帰できたものの、足はびしょぬれだ。全速力で襲い来る凍傷の恐れから逃げるように車まで急ぎ下山した。
カッコ着かない形になったが、全員無事で計画を完遂できて本当に良かった。
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